針棒とメタルの点検と交換方法を厚物用上下送り筒型ミシンで解説します

長年使ってきた愛用のミシン。
針が新品で針と釜の調整ができているのに、縫う物の厚みや場所によって針と釜の剣先が当たるチッチッチッチッという音がしたり、たまに目が飛ぶという症状はありませんか?

もしかしたら針棒とメタルがすり減ってガタがあるかもしれません。
私Goziの「JUKI厚物用上下送りシリンダーベッドミシンDSU-144N」の針棒とメタル(下メタル)を交換したので、その点検と交換要領を解説していきます。

他の機種や種類(総合送り以外の下送り、上下送りの平ベッド、シリンダーベッド)でも基本的に同じなので、参考にしていただければと思います。

なお、掃除、点検、調整、整備などの縫製以外の作業は、必ずミシンの電源を切って行って下さい

※ 私のDSU-144Nは針棒と下メタルの交換ではガタが解消されなかったため、後日上メタルも交換しました。
上メタルの交換要領は下記記事で解説していますので、下メタルとの同時交換もおすすめです。
「針棒の上メタル交換を工業用上下送り筒型ミシンで解説します」

針棒ガタの点検方法は、針棒を一番下まで下げて人さし指で左右に押してガタを見ます。

DSU-144N針と釜の剣先のすき間は0.02〜0.05mmなので、この範囲内で調整されているとして、ガタが0.1mmあれば縫製の条件によっては針と剣先が当たり、異音目飛びの原因になることが予想がつきます。

測定機が無くても上記のように点検すればガタがあれば分かります。


正常な場合 多少ゆれますがはカタカタ感はありません。
異常の場合 左右に押すと微小ですがカタカタ感があります。

複数のミシンをお持ちなら比べてみると分かりやすいです。

縫製に問題が無ければそのまま使います。

縫製に問題がある場合
針と釜の剣先が当たる。目飛びは針の曲がり、針先のつぶれ、針と釜の調整など他の原因を探します。
以上に問題なければ針棒の曲がりがあるかもしれません。

針棒の曲がりの点検は、新品の針を取り付け、針板の穴と針の位置を見ます。

「針棒の曲がりの点検要領を解説します」

で点検方法を説明しています。

点検して曲がっていれば針棒のみを交換します。

整備に自信が無い。
今までご自身で針と釜の調整をされたことが無かったらミシン店に依頼されると良いかもしれません。

リンク記事
「本縫ミシン 針と釜の関係 調整方法を解説します」

ガタがある場合、針棒とメタルの交換が必要になります。
針棒の交換は比較的簡単にできますが、メタルの交換は少し難しいです。

このときメタル交換は大変なので、針棒の交換だけで改善されないかと思います。

私もそうでした。
メーカーもミシン店も、どちらかというと材質的にメタルのほうが減るとのことでした。

実際、交換点検してみて以下の通りでした。

  • 旧針棒 旧下メタル   ガタあり  ✗
  • 新針棒 旧下メタル   ガタあり  ✗
  • 旧針棒 新下メタル   ガタわずか △
  • 新針棒 新下メタル   ガタほんの微か ○
  • 新針棒 新下メタル 新上メタル ガタなし ◎


この結果からメタルの交換は必須です。
以後は交換の解説をしていきます。



直接ミシン店に依頼するか、お使いのメーカーミシンのパーツリストがネットにあれば書き出してミシン店にて注文します。

JUKIなら工業用ミシンのページから機種を選びアカウントを作ればパーツリストに入れます。
パーツリストから針棒、メタルなど必要なパーツを選びカートに入れます。
カートと言ってもここで購入はできませんので、カートのページをエクスポート、プリントアウトしてミシン店に依頼してパーツを入手します。

メタル交換には打ち棒が必要です。

DSU-144Nのメタル(下メタル)の直径(外径)はおよそ11mm

打ち棒はメタルの外径寸法より少し小さな10mm程度のもの、長さ100mm〜150mmのできれば柔らかい真鍮丸棒を。
硬い鉄棒でも叩き方をより慎重にすれば可です。

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長い丸棒は切って使います。

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私は運良く直径10mmの鉄棒が見つかりました。 (全長100mmのうち細い部分が15mm)

メタルの内径を測ります。

この丸棒を作業性を良くするためにメタルの内径およそ7.2mmにはまるように加工します。
(この加工はボール盤もしくは卓上グラインダーなど持っている方は特に新しいメタルを入れるときの作業性が良くなるので切削を行ったほうが良いのですが、無加工のままストレートの丸棒でもメタルの交換作業はできます。)

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鉄棒をボール盤に取り付けます
(写真はマキタの卓上ボール盤 TB131)


ボール盤を回し、切削油を塗ったヤスリを押し当て直径が7mmになるよう削ります。 

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ヤスリの粗さを 荒→中→細→油 と仕上げます。

打ち棒が完成しました。



  • 打ち棒
  • マイナスドライバー各種
  • 金属のハンマー

マイナスドライバーはPBがおすすめ
(ただしスイスグリップは溶けるので、クラシックハンドルかマルチクラフトがおすすめ)

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もくじ

  1. 面板の取り外し
  2. 針棒周辺パーツ取り外し
  3. 針棒取り外し
  4. 釜と周辺パーツ取り外し
  5. ミシンの頭部を倒す
  6. メタルの出ている部分 高さの測定
  7. メタル取り外し
  8. 外したパーツ及び頭部の針棒や釜周辺の清掃
  9. メタル取り付け
  10. 針棒取り付け 最下点の印位置で固定 ガタ点検
  11. 釜と釜周辺取り付け
  12. 針棒糸掛けの取り付け
  13. 新品針の取り付け
  14. 針と釜の調整
  15. 針棒周辺取り付け
  16. バネ支え軸の組付けと調整
  17. 面板の取り付け
  18. 試し縫い
  19. 完成

上下2カ所のネジをゆるめます。
このとき、ゆるみ切るまで2本のネジを交互に少しずつゆるめます。


メンイタの場合構造上、下から上の順番に交互に緩めると良いでしょう。

先にネジ1本だけゆるめますと、もう1本のネジや筐体に力がかかり、痛めたり損傷の原因にもなります。

締めるときも同じです。

基本、複数のネジをゆるめる、または締めるときには「交互に少しずつ」ゆるめるときは「外から内」締めるときは「内から外」です。

メンイタが外れました。

ハリボウ周辺のオクリアシ、オサエアシの取り外し

送り足と押え足

ハリボウイトカケ取り外し

ネジを外し、少し硬いですが下に引けば取れます。
硬ければマイナスドライバーを段に置き軽く叩いたら外れます。                                                                     

針棒糸掛け

ハリボウ周辺のパーツが外れました。

上の写真でネジで止まっているハリボウ手前のシタイトカケも外します。

ハリボウ上のキャップを取り外し

ハリボウダキのヒラネジを緩める

針棒抱き

ネジをゆるめたらハズミグルマで最下点までハリボウを下ろし、下りたハリボウを下から指で押し上げます。

上から出てきたハリボウを抜き取ります。

   ハリボウ 右:新  左:旧

ハリイタの取り外し

針板

オクリの取り外し

送り
送りの取り外し

トメネジをゆるめバネササエジクを抜きます。

バネ支え軸の取り外し

バネササエジクはネジではなく差し込んであるだけなので、ハズミグルマでオクリダイを下げ、ピンセットで引けば抜けてきます。

送り台からバネ支え軸を抜く

バネササエジクを抜くと、オクリダイを持ち上げることができるので、ハリイタダイを取り外すことができます。

ハリイタダイをオクリダイを持ち上げ、付いているジョウゲオクリピンを落とさないよう気をつけて取り外します。

針板台の取り外し 2種類4本のネジでとまっています

カマを三本のネジをゆるめ取り外します。

釜の取り外し

下に付いているカマカバーを留めるツメも外します。

ハリボウ周辺、カマ周辺のパーツが外れたら頭部を倒します。

新品メタルを入れるときにここで測った数値に合わせ打ち込みます。
このDSU-144Nのメタルの出は0.9mmでした。


メタルの出はミシンのメーカーで違いますし、機種や個体が違うと数値が違う可能性があるので必ず計測します。

タオルなどでカマ取付部の保護、養生をします。

メタルの下側から作った打ち棒をはめ、金属ハンマーで弱い力で軽くコンコンコンと叩きゆっくり抜いていきます。

無加工 ストレート棒の場合
メタルにはまる細軸が無い打ち棒では特に慎重に。
打ち棒でミシン本体を打たないよう気をつけます。
打ち棒がミシンに入るまで一打一打丁寧に叩きます。

メタルが抜けました。

メタルが抜けました
メタルと加工製作した打ち棒

メタルを外したら普段見れないパーツの裏側や頭部の隠れた部分もこの機会に清掃。

メタルにミシンオイルか潤滑油を薄く塗布します。

打ち棒にメタルを付けて打ち込みます。

このとき打ち棒にメタルに差し込み軸があると、棒とメタルが分離しないため、最初の打ち込む角度を決めやすくわりと簡単に入り出します。

入れるときも、弱い力でコンコンと小さく叩いて入れてきます。
(硬い鉄棒で強く叩くとメタルが潰れる可能性があります、必ず弱く小さく叩きます)

測定した0.9mm手前になったら慎重に。
叩いて測って叩いて測ってを繰り返し高さを合わせます。

メタルの打ち込み

出、0.9mmに合わせました。

もし私がこの状況になったら、頭を起こし、2面が平行の金属(イメージはコイン状のもの)をメタルの上に乗せ、上から外した針棒を通し、ハンマーで叩いて下ろすと思います。

下りたら頭を倒し、再び高さの調整をします。

簡単に剥がれる養生用のP-カットテープで打ち棒とメタルを固定します。

これで打ち込み初期の不安定さがなくなります。

ミシンオイルなどの潤滑剤は固定した後に、メタルの先端に薄く塗ります。

P-カットテープ手前まで打ち込んだらP-カットテープを剥がし、メタルに潤滑剤を塗り、打ち棒とメタルがずれないよう慎重に決めた高さまで打ち込んでいきます。

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P-カットテープで打ち棒とメタルを固定

新品のハリボウを抜いた逆の手順でウワメタルからハリボウダキを通してシタメタルへ

ハリボウダキのネジはハリボウの最下点をメタル下端で合わせ締めます。

後に釜と針の調整をします。

ハリボウの4本の線の内、下2本がDP×17用
下から2番目の線が最下点位置

新品のハリボウとメタルでも念の為ガタの点検をします。


下の記事を参照して下さい。

カマ取り付け後には付けにくいカマカバートメを付けます。

長穴になっているので少し上にあげて締めます。
カマカバーを付けたとき硬い、または緩ければ調節します。

釜カバー止め

ハリイタダイにジョウゲオクリピンが付いていることを確認します。
オクリダイを持ち上げ、カマを中釜トメの溝にセットしたハリイタダイを取り付けます。

針板台の取り付け

ネジが入る穴を合わせ取り付けます。

(ネジとともに新品にすることをオススメします)

針と釜の調整のため、使用している新品の一番太い針を取り付けます。

針と釜の調整方法はブログ記事「本縫ミシン 針と釜の関係 調整方法を解説します」を参照お願いします。

オサエアシ、オクリアシ、シタイトカケを取り付けます。

シタイトカケの取り付け。
(この機会に新品にすることをオススメします)

抜いた状態のバネササエジクにはオクリダイと接触した痕があります。
この位置をだいたいの調整の目安にします。

バネササエジクをオクリダイの下に差し込みます。

ハズミグルマを回しオクリダイを下げ、3つある左の穴からドライバーなどで下にバネを押さえると入ります。

オクリアシを降ろします。

ハズミグルマを回し送り歯(オクリダイ)を一番高い位置にします。

バネササエジクは偏心しています。
バネササエジクを回し軽くオクリダイ接触するところで止めます。
トメネジで固定します。

(シリンダーベッドミシンのバネササエジクの調整方法は取扱説明書にも記載されています。)

間違って低い位置の送り歯(オクリダイ)でバネササエジクの調整をすると、異音や損傷の原因になります。

調整が終わったらハズミグルマを回し強く当たっていないか確認します。

ゆっくり慣らす感じで試し縫いを。
手順通り間違いなく組付け調整ができていれば問題なく縫えるはずです。

お疲れ様でした。

よい縫製ライフを

私GoziのDSU-144Nは20年超使って来ました。
注油、メンテナンスをしながらでもガタはきます。

ミシンの使用頻度、縫うもの、負荷のかけ具合や注油などメンテナンスによって針棒とメタルの減り具合は違うので一概に何年間は大丈夫とは言えません。

縫製時、異音、糸飛びなど違和感、不具合を感じたら点検をします。

針棒にガタがある場合、ミシン店に相談するか?自身で直すか?を決めます。

いずれにしても、そのまま使っていてもガタが大きくなることはあっても直ることはありません。

この記事を読んで、点検し、異常に気がついたときには早めに対処することが賢明です。

たまたまこの記事を目にして点検し「少しガタがある気もするけど縫製に問題が無い」のであれば、私はそのまま使えばいいと思っています。

ただ、分からないまま作業はしないでください。
疑問があればミシン店に相談することをおすすめします。

点検または修理をご自身でしてみようという方に、この記事が役に立てば幸いです。

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