カバン作りのミシン 平縫い、筒縫いの次はポストベッドミシンです。

  • 2020年7月29日
  • 2024年1月31日
  • ミシン

工業用ミシン。
平ベッドミシンとシリンダーベッドミシンの他、あと一台導入できるのなら、ポストベッドミシンをおすすめします。

ハイポストベッド1本針本縫総合送りミシンの紹介です

ポストミシンとはどんなミシン

字の如く、ポスト状の筒の先端に下糸用の釜と下送り機構が組み込まれている、製品を立体のまま縫製できるミシンです。

ポストミシンには、ポストの長さや右ポスト(右釜)、左ポスト(左釜)、送りの種類や針が1本か2本かなど様々な種類があります。

主に靴、鞄、自動車の内装に使われます。

クツ作りにはポストミシン

以前、靴のアッパー作りは18種ミシンという通常のミシンとは逆の、シリンダーを左側にして使うミシンで制作していましたが、今の靴作りの現場ではポストミシンが主流です。

カバン作りにはハイポストミシンが最適

ポストミシンの中でも、背のある立体物をより深くを縫うことができるハイポストミシンがおすすめです。

総合送り
ほとんどのポストミシンは総合送りです。
針が刺さったまま送り足と針が素材を送ります。
このためパワフルで、縫いずれが起こりません。
押さえの跡が付きにくく、皮革などできるだけきれいに縫いたい素材におすすめです。



総合送りミシンの送りの様子

針と送り足が、生地を前から後ろに送ります。


なぜポストミシンが必要なのか?

帆布や革で製品を作るとき、平ベッドミシンとシリンダーベッドミシンがあれば大抵のものは作れます。

Goziも6年ぐらいは補助ベッドが付けられるJUKIのシリンダーベッドミシン「DSU-144N」1台のみで制作していました。

それで、特になにも困ることはありませんでした。

しかし、
ポストミシンの最大の魅力は、それらのミシンではできないこと、困難なことを解決できるところにあります

このポストベッドという独特な構造が今までできなかったことをを可能にしてくれます。が、ただ、それ故に値段も高価。

イイなと思っても、もしかしたらあまり出番が無いかもしれないミシンの価格を聞いたら二の足を踏んでしまうのではないのでしょうか。

実際Goziも迷いました。

そこでGoziがなぜポストミシンが必要と思ったのか。
導入して良かったことを解説します。

ポストミシン導入4つのメリット

バッグの底など深いところを立体のまま縫える

シリンダーベッドミシン(筒縫い)では困難なところがサクサク縫える

デザインの自由度が広がる

④ カバンの修理に有効です


① バッグの深いところを立体のまま縫える

組み上げ後にしかできない縫製にはポストミシンが必要です。

例えば、バッグの底やサイドポケットなどの補強にステッチを入れたい場合など立体のまま縫製が可能というところ、特に深い部分を縫えることが最大の導入理由になると思います。


② シリンダーベッドミシン(筒縫い)では困難なところがサクサク縫える

筒縫いでは、筒状のものをシリンダーに対して垂直方向には縫い易いのですが、水平方向には非常に縫い難いのです。

それに対してポストミシンはどんな方向にも自由に縫い進められます。

シリンダーベッドミシンでもなんとかできる場合もありますが、かなり無理をします。

例えば、ジーンズの膝の穴あき修理に例えると、シリンダーベッドミシンでは縦方向(ジーンズの上下)に縫うのは困難ですが、ポストミシンではいとも簡単に縦方向にステッチを入れ、補修することができます。

③ デザインの自由度が広がる

①と②の項目を踏まえて、立体のまま縫製できるということは、そのことを念頭に置いたデザインが可能になります。

これまで無理と思っていたデザインが現実可能になるかも。

いろいろなことができると思うとワクワクしますね。

④ カバンの修理にとても有効です

制作だけじゃない。
  修理にも活躍します。

修理には専用ミシン。形状は筒縫いミシンのようですが、押さえが380°回転し、素材を動かさずにあらゆる方向に縫える八方ミシンがあります。

靴や鞄の修理店には必ず置いてあるミシンです。

ポストミシンもその形状からあらゆる方向に縫い進められます。

制作では、ポストミシンがあれば表現の自由度は上がりますが、無ければデザインを変えるか、省くか、工夫するかでなんとかなる場合もあります。

しかし、修理では、補修の場所によってはかなりバラさないとできません。

当然バラせばいい訳ですが、バラす手間もありますし、再び縫い合わせるときによっぽど慎重に縫い合わせをしないと縫いズレや、再縫製で生地を痛める可能性もあります。

できれば工程を最小にして、最高の出来上がりにしたい。

製品を販売し何年か経つと傷んだ製品の修理依頼が入ります。
そのときに袋状のまま修理ができるこのミシンがあって良かったなとつくづく思います。

当店GOZI帆布のリュックT-1の底の修理もハイポストミシンが無いと不可能です。

○ ハイポストミシンでの補修例

T-1 底の解れ 修理前

大きく当てを付ける

修理完了 前側

以上のことを考えて、製品の修理をされる方には八方ミシンのように使えて、必要最低限だけでの修理を可能にしてくれるポストミシンはとても重宝すると思います。


なぜポストミシンではなくハイポストミシンなのか?

ハイポストミシン導入のメリット
普通のポストミシンでも良いのでは?
カバン製作に「ハイ」ポストミシンを選ぶ理由

理由1
バッグのより深いところを縫おうとすればハイポストミシンの方がが有利です。

理由2
ハイポストミシンは左ポスト(釜の位置が左)
袋状の対象物底を左に寄せて、例えば底の際をギリギリ左方向に寄せて縫うことができるため。

縫製対象を乗せるとき、素材を乗せる面積の小さなポストミシンでは、ポストが左側にあるほうが(針落ち左側が土台になる)対象物を水平にしやすく縫いやすい。
このためカバン製作では左ポストの方が使いやすいと思います。
(反対に靴制作では右ポストが一般的です)

GoziがハイポストミシンJUKIのPLC-1691を選んだ理由

当時、ハイポストベッドミシンというミシンの写真を見たときに、このミシンがあればデザインの幅が広がる予感がして「こんなミシンがあったらイイな」と思っていました。
実際ミシン店社長に「ハイポストミシンがあったらいいな」と言っていました。

しかし、値段も高いし新品では買えないとも思っていました。

ある時社長から、「メーカー展示品のため、PLC-1691が新古価格で出せるけどどう?」
という連絡を頂き、かなり悩んだ結果「エイッ」という感じで。

希望は下糸の取り替え頻度の少ない倍釜のPLC-1690が良いなと思っていましたが、ポスト先端が標準釜の方がより小さい為、より狭いものを縫うにはこちらの方が有利、日頃の使用頻度も少なく、小釜でも全く不便が無いです。

モーターも中古のサーボモーターですが、充分です。

PLC-1691はポスト先端部がPLC-1690に比べ小さな標準釜仕様

ハイポストミシン導入へのボトルネックと
導入時に念頭に置くこと


■ 最大のボトルネックは

価格が高い

一番の障壁はコレですね。

取り付けるモーターにもよりますが、感覚的には軽トラ一台分くらい。
(価格はミシン店にお問い合わせを)

一般的な工業用ミシンというより、特殊工作マシーン(と思う)だから仕方ないよね。
絶対必要だから仕方ないよね。 と納得します。 させます(させました)。

■ ハイポストベッドミシンの導入で念頭に置くこと

● 使いこなすには練習が必要

細い棒の上で縫製するので当然対象物は安定しません。

使いこなすにはそれなりの熟練度が必要です。

●ミシンの背が高いため、縫うための最適なポジションを探さなければならない。

普通のミシンと比べ、高く特殊なサイズなので、最も使い易い高さを決める必要があります。

購入前にこれでいいと高さを決めても、実際に導入して作業してみないと分からないことがあります。

GoziがPLC-1691を導入した当初、針落ちの高さを普通のミシンの高さに近づけるため、ミシン台の足を短く加工してもらったていたのですが、自分の足が窮屈でとても使いづらい。

暫く使ってもどうしても慣れないため、足を通常の無加工のものに交換してもらい、ミシンの高さが上がった分は背の高い丸イス(700mm)を探して対応しました。

飫肥杉の足場板を再利用した丸椅子です。
WOODPRO OLD ASHIBA(足場板古材) 椅子

普通のミシン用のイスの高さが500mm弱なので700mmはかなり高いですが、当初の窮屈なポジションより快適に作業できます。

但し、低い方が使い易いという方もみえると思います。
正解は使う人それぞれ。


上記のこともあり、信頼できるミシン店でのご相談ご購入を。

● 出番が少ないかも

製作者のデザイン、作るものによりますが、Goziの場合DSU-144Nに比べ出番は圧倒的に少ないです。

それでも修理など、ここぞというときにはあってよかったと心底思います。

● 置き場所の確保と重量

例えば工業用ミシンの平ベッド、シリンダーベッド+新たにポストベッド3台を置くとなると場所をとります。

そして一般的な平ベッド、シリンダーベッドミシンと比べてもかなりの重量があります。床が弱いと建物に負担になる可能性も。

万が一大きな地震があると背が高く転倒の恐れがあり、かつ重量があり危険なため、置き場所や固定することをも必要です。

○ 当工房のPLC-1691は地震対策のため、ミシン台の足と裏に柱のある壁に金具とロープで固定しています。

ハイポストベッドミシンまとめ

製品を作り慣れた頃から「こんなときにあったら良いな」と思い始めるミシンです。

特殊なミシンなので、それ故出番も少なく(私Goziの場合)値段も高いのですが、 このミシンでしかできないことがあります。

デザイン、制作、修理
作るもの、デザイン、作業によってはこのミシンがとても活躍します。

仕事に対してこのミシンの価値を見いだすことができれば「買い」です。

ポストベッドミシンのメーカーは

JUKI PLC-1690(1.6倍釜) PLC-1691(標準釜)

SEIKO LHPWNシリーズ

ADLER

があります。

中古で探すのも

カバン製作にはできればハイポストミシンが良いのですが、例えば中古でポストミシンがお値打ちに出てれば(但し信頼できるミシン店で)検討するのも良いと思います。

ポストベッドミシン
気になったらミシン店にそれとなく伝えておいたら良い情報を貰えるかも。



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